『ミッドナイト・ゴスペル』第8話「銀のねずみ」感想

第8話「銀のねずみ」

 

子どもになったクランシー、もといダンガンと彼の母親デニーンが出会うところから物語は始まる。母親に抱きかかえられ、涙ぐみながら母親を呼ぶクランシー。もうすでに泣きそう(5周目)。

 

トークはダンガンの出産話から始まる。会話中に為される親子のスキンシップが愛情に溢れていて心が満ち足りる。それにしても「割礼」、初めて聞いた……なかなか衝撃的な文化だ……。

 

人格形成や人生観の話をしていく中、母親は老いていき、ダンガンは成長していく。人選を早送りしている感覚に陥る。母親の頭髪は白く、ベッドに横たわりながら話は続く。マインドフルネスの話に花を咲かせていた最中、母親は臨終を迎える。劇的でなく淡々と。

 

そしてダンガンは妊娠し、母親を出産する。「死は出産の過程」。第2話で言ったでしょ? と言わんばかりに。本作一、アニメーションが暴力を振るってきた瞬間である。へその緒を噛み千切るかわいい熊のお医者さんなんなんだ……。

 

生まれた母親と瞑想の話が続けられる。今を感じて現実を受け入れる、第1話や第5話、第7話で言われてきた内容の復習みたい。絶えず変化する現実を受け入れることは意識的に無意識にならないと無理なのかもしれない。

 

話題は母親の病気、死生観へ。余命宣告から自分の火葬にかかる費用を聞いた母親。第7話でのデスケア産業の話が脳裏をよぎる。「人がこの世を去るときに何らかの力が働いて去らねばならないなら私にできることはない」。散々言われてきている。現実を受け入れるしかないのだ。人は必ず死に、ものは必ず壊れる。諸行無常なだけである。

 

「姿は変わるだろうけど…失ったらこの悲しみをどうすればいいのさ」。ダンガンは母親に問いかける。母親はただ一言「泣くのよ」と。そして2人は抱き合いながら涙する。悲しみを心から逃がすには泣くしかないのだ。……だから自分もここで泣くしかないのだ。

 

ダンガンは母親の死を「人生最大の真実」だと言う。人は必ず死ぬ。これが人生において最大の真実。シンプルであるがゆえの強さが宿っている。この「人生最大の真実」を誰もが避けようとしている。誰もが知っていることなのに誰もが好んで向き合おうとしない。何も準備をしてこなければこの真実に体が耐えられないから。如何にして死に向き合うか、このアニメで今まで語られてきたことが群を為して襲いかかってくる。

 

母親は「痛みも形を変える」と言う。それが愛。第2話でダンガンが「僕にとっては一番難解な概念だよ」と言っていた愛。「愛があれば痛みが薬に変わ」り、死すら乗り越えられる。


死に直面している人へのアドバイスとして母親は「泣きたいときには泣いて」「そして死と呼ばれるものに向き合って」と言う。「死は無料で学べる講師」であると。


そしてダンガンと母親はブラックホールに飲まれ、超新星爆発を起こす。

 

 

 

 

 

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今まで点でしかなかった各話が全て繋がって集約されたような最終話。期末試験のよう。現実に身を任せ、現実を受け入れる。これに尽きるんだなぁ。今まで見たことがないようなアニメでとても面白かったです。

 

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一番最後にインタビューしたのってもしかしてラム・ダス?