大野晋 著『日本語練習帳』感想
紙鶴です。大野晋 著の『日本語練習帳』(岩波新書)を読みました。
どうすればよりよく読めて書けるようになるか.何に気をつけどんな姿勢で文章に向かえばよいのか.練習問題に答えながら,単語に敏感になる習練から始めて,文の組み立て,文章の展開,敬語の基本など,日本語の骨格を理解し技能をみがく.学生・社会人のために著者が60年の研究を傾けて語る日本語トレーニングの手順.
高校生のときに配られた夏の課題図書を今になってちゃんと読んでみた。
本書は5つの章に区分されている。それぞれについての感想をば。
1. 単語に敏感になろう
何気なしに使っている日本語だけど、ちゃんと意味を理解して使えていないことに気付く。「思う」と「考える」、「通る」と「通じる」、意味が似ていても全く同じ意味を持っていない言葉について触れられている。
ときには、「新しい言葉」をつくる人もいます。(中略)その大部分は一〇年もたたずに消えました。それはつくられたものの底が浅かったのです。(P17)
最近だと「エモい」が当てはまるような気がする。今は使えていても、今後もちゃんと使っていける言葉かと言われると怪しい。「すごい」「やばい」等の「複数の意味を内包していてとりあえず使っておけばいい言葉」を多用するのは危険だと改めて思った。自分の好きなものをちゃんと表現できるよう、単語に敏感にならねば。辞書買って暇なときに読もうかな。
2. 文法なんか嫌い
「は」と「が」の違いについて。学生時代に聞いたような聞いてないような内容がわかりやすく書かれている。「私”は”紙鶴です」と「私”が”紙鶴です」の違いなんて意識しないですもんね。
3. 二つの心得
筆者が物書きをするときに気をつけていること。小休憩。
4. 文章の骨格
極意とは実は簡単なものです。その言葉だけを見るとしれは簡単です。しかし、その言葉が指す事実がいかに広く深いかを、実際を通して感得できるに至ってようやく、極意書の文章の意味が分かるようになったといえるでしょう。(P113)
良い文章を書くにはたくさん読むこと、と本書では語られている。文章をよく読み、要約し、無駄な部分を削ることで文章の骨格が理解できる。実際に文章を書く際はその逆で、骨格を作り、それに肉付けをしていく。文章の全体像を把握するため、事前にメモを使う必要性を説いている(ここを読んでいながらこの感想を書く用のメモを用意していないのはなぜなのか)。
5. 敬語の基本
題目通り。
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「言語は通じるときもある、通じないときもある」(P208)
言葉を適切に理解することで相手の言っていることがわかり、自分の言いたいことが伝わる。ただ、これは双方の努力によって成り立つものである。言語を理解するための努力とでも言うのだろうか。自分が適切な用法で言葉を使っていても、相手が言葉の意味を理解していないと通じない。逆もまた然りで、相手が使っている言葉を自分が理解していなければ言語は通じない。言葉を間違った意味で覚えていたら違ったニュアンスで受け取ってしまうこともあり得る。
言葉は天然自然に通じるものではなくて、相手に分かってもらえるように努力して表現し、相手をよく理解できるようにと努力して読み、あるいは聞く。そういう好意が言語なのだと私は考えています。(P210)
胸に刻みたい。