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武田綾乃 著『その日、朱音は空を飛んだ』感想

紙鶴です。武田綾乃 著の『その日、朱音は空を飛んだ』(幻冬舎)を読みました。

その日、朱音は空を飛んだ (幻冬舎単行本)

その日、朱音は空を飛んだ (幻冬舎単行本)

 

 学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。彼女の自殺の原因は―そもそも本当に自殺だったのか。ネットに流れる自殺現場の動画を撮ったのは誰?映っていたのは誰?いじめはあったのか、遺書はあったのか。クラスメイトに配られたアンケートから見え隠れする、高校生たちの静かな怒り妬み欲望…。少女の死が浮き彫りにした、箱庭の中で生きる子供たちの本当の顔。ヒエラルキー、マウンティング、役割分担、キャラ設定…。青春小説界の新鋭が描き切った「わたしたちの」物語。

「BOOK」データベースより

 

 

響け! ユーフォニアム』シリーズの著者である武田綾乃さんの作品ってことで以前から気になっていた本。

「川崎朱音の死」を中心に、登場人物たちの視点からそれぞれの関係性や心情が垣間見える構成。第2章まで読んだ所感は「『桐島、部活やめるってよ』みたいな感じかなー」だった。第3章から「準備運動はここまで。そろそろ本気出してもいい?」と言わんばかりの加速が始まる。ページを捲るたびにどんどん先が気になっていく。ひとつひとつの言葉が伏線なんじゃないかと疑いながら、答え合わせを急ぐように読み進めていった。そうしてたどり着いた最終章を読み終え、一息ついた後に待ち受けるエピローグ。完全に食らった。謎は全て綺麗に解かれ、すっきりしていてもおかしくないのに。読後に残ったこの感情はどこに追いやればいいのか。

こんな自殺って。

 

 

 

【アニメ化時のキャスティング妄想】

一ノ瀬祐介:内山昂輝さん

田島俊平:木村良平さん

石原恵:大西沙織さん or 藤田茜さん

近藤理央:藤田茜さん or 松田利冴さん

細江愛:喜多村英梨さん or 佐倉綾音さん

桐ケ谷美月:寿美菜子さん

夏川莉苑:悠木碧さん

中澤博:田村睦心さん

高野純佳:早見沙織さん or 雨宮天さん

川崎朱音:上田麗奈さん

 

 

 

 

以下、ネタバレ含む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

単なるクラスメイトの一人が死んだとして、ソイツが生きていた頃に欠席したときと一体何が変わるというのだろうか。生きていてもいなくても、大した違いはないんじゃないか。(P22)

 序盤に出てきたこの文章が最後まで付き纏ってくるとは思いもしなかった。

結局、川崎朱音の自殺は何にもならなかった。夏川莉苑の手によって何にもなれなかった。

夏川莉苑。そう。この女の子の登場でこの作品は姿を変えた。「世界は生きている人間のためにあるべき」。この言葉の持つ力が強すぎた。これまで描写されてきた内容全てが歪んでいく。最も歪んだのは優等生の高野純佳だった。ここまで歪んでいく過程を見るとある種の快感すら覚えてしまう。

 

私がいい子じゃなくなったら、世界は一体どうなってしまうのだろう。(P289)

 

 

 

 

自殺を扱った小説の『十字架』とはまた違った面白さがあった。こちらは(いじめも関係してくることもあって)自殺が与える影響力の強さが際立っていた。

kamitsuru.hatenablog.jp

 

 

本書では全く逆。人が死んでも何も変わらない(こともある)。「世界は生きている人間のためにあるべき」なのだから、死んでしまった人間は生きている人間の不都合になってはいけないのだ。

 

 

 


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