『冴えない彼女の育てかた Girls Side 3』を読みました。

紙鶴です。丸戸史明 著の『冴えない彼女の育てかた Girls Side 3』(富士見ファンタジア文庫)を読みました。

誰もが求めていなかった“転”のイベント。停滞するサークル副代表、加藤恵の前に新生「blessing software」の少女たちが現れる。そして倫也と同じように、恵もまた大きな決断をすることに。なぜ少女は、オタクで、自分勝手な少年と一緒にいることを選んだのか。フラットで感情表現が適当と言われていた少女はもういない。ここにいるのは、メインヒロインの座を決して譲らない冴えない彼女―。サークル代表不在の裏側を描く、少女たちのギャルゲー制作。

「BOOK」データベースより

 

 

彼女たち、霞ヶ丘詩羽先輩と加藤恵の決断の物語。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

霞ヶ丘詩羽先輩。理性的に狂っている。新プロジェクトを立ち上げ、その題材として澤村・スペンサー・英梨々および自身を起用。倫也と同様に自身と周囲の関係を創作にそのまま落とし込む形をとった。自身を創作に投影していた純情ヘクトパスカルとは異なり、今回は投身とも言えるレベルの投影。クリエイターとしての倫也に影響された産物なのか。自身の感情を創作として昇華させることで(無理やり)区切りをつけるあたり、彼女のクリエイター精神が伺える。

彼女は英梨々と共にクリエイターとして邁進する決断と倫也を諦める決断をした。倫也の憧れでいるために、倫也の側にいるためにはそうするしかないのだから。ひとりの女の子として選ばれないのなら、ひとりの女の子として以外で選ばれればいい。そう思うしかないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加藤恵。普通の女の子。好きな人ができた恋する普通の女の子。恋する女の子は普通に感情的で面倒くさくて傲慢で意地っ張りで素直じゃなくてわがままで、どうしようもなく好きな人が好き。ただそれだけ。普通のこと。今ままでの加藤恵と何ら変わらない、普通にフラットな女の子。素直になれないこともヤキモチ焼くこともある。好きな人は好きだし誰にも渡したくないし独占欲だってある。恋してるんだからこれくらい普通。

彼女は自分の気持ちに正直になる決断とメインヒロインになる決断をした。倫也がメインライターとして主人公になって創作をしてきたように、恵も副代表としてではなく、メインヒロインになって創作をしなければならない。メインヒロインはどういう人物かどうかはさして重要ではない。だって加藤恵という人物がメインヒロインなんだから。加藤恵が普通に心惹かれて普通に好きになって普通に恋する決断をしたことがメインヒロインたりえる要素なんだ。他の人がどうだとか一切関係ない。ただ加藤恵がメインヒロインとして恋をする、そこに尽きる。両思いになるにはメインヒロインがちゃんと主人公に対する好意を自覚しないといけないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加藤恵に好かれる世界線にいない自分も自覚するべきなのだ。これ以上妄信したところで何にもならないことを。虚しさだけが積み上がっていく。彼女の手を握ることすらできないのだから握り返されることなんて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

加藤恵

 

 


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