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『ハクメイとミコチ』第38話「旅人の装い」感想

紙鶴です。『ハクメイとミコチ』単行本6巻に収録されている第38話「旅人の装い」の感想。

 

 

ミコチが衣装コンテストに参加するお話。参加の経緯は語られていませんがおそらく景品目当てといったところ。ミコチよりハクメイの方がコンテストや勝負事のような勝ち負け・順位のつく出来事に参加するイメージが強かったので、ミコチがメインの今回は少し珍しく感じました。

 

「コンテストに出す服なんて作った事なくて」「自身なくなってきた」とは言うものの、過去のコンテスト資料からアイデアを吸収するミコチ。勝ち負けがつかなくても常に良いものを作ろうと試行錯誤するミコチは6巻に至るまで幾度となく目にしてきました。今回のコンテストも普段のもの作りの延長、優勝したい気持ちより良いものを作りたい気持ちの方が強いんじゃないかと。

 

デザインに悩むもハクメイの一言で「旅人の服」を閃き、作業に取りかかる2人。そんな中、ナイトスネイル参加の報が入ります。ミコチが一番好きなデザイナーが審査員ではなく、参加者としてコンテストに出場するという。自信をなくすミコチ。これがコンテストではなくフリーマーケットだったら意気揚々と服作りにいそしんでいたのかもしれません。優劣のつかない場ではなく、憧れに挑戦する場、優劣のつく場はミコチにとって避けられるなら避けて通りたい場のような気がします。普段のもの作りの延長として軽い気持ちで参加したミコチの心が揺らいでしまいます。

 

 

そんなミコチに対しハクメイは「私が本当に旅に出ると思え」と言います。

 

 

コンテスト当日。服の出来を問われ「それもう最高だ!」と答えます。ハクメイが。ミコチは衣装をハクメイに託し、コンテストは始まりを迎えます。作品紹介は着々と進み、ナイトスネイル、そしてミコチの衣装が紹介されます。

 

結果はナイトスネイルに次ぐ2位。ナイトスネイルの衣装を見て「負けてない!」と、自分たちの作った衣装を見て「一番いい!」と、そう思っていたミコチ。「いい服だなって心から思ったよ」と、コンテスト終了後に言ったハクメイ。間違いなく良いものが出来たことには変わりはなく。それでも優劣がついてしまうのがコンテスト。

 

ミコチはハクメイへの”餞別”を作ってコンテストに臨んでいました。大好きな人との最後の別れに渡す服。ミコチが憧れに挑んだ大一番。どれだけの想いと熱量が込められているのか、想像もつきません。優勝したい気持ちが良いものを作りたい気持ちと同等、もしくはそれ以上になってしまうくらいに膨れあがってしまった、そんな気すらしてきます。

 

それでも現実は甘くなく、勝つことはできませんでした。想いと熱量が足りなかったのか、服作りの技術が足りなかったのか、その両方が足りなかったのか。憧れに届きそうで届かない距離にいながら心から喜ぶことができない、行き場のない気持ち。優勝することで何者かになりたかったわけではない。”餞別”が優勝できるほどのものではなかった、その現実がただただ突き刺さってくる、それだけ。それだけだからこそ……。

 

涙を流すミコチと、励ますでもなく慰めるでもなく、ただただ傍にいるハクメイ。『ハクメイとミコチ』第38話「旅人の装い」、神回です。

  

 

 

ハクメイとミコチ 6巻 (HARTA COMIX)

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