劇団AUN 第25回公演 「一尺四方の聖域」を観ました。

紙鶴です。「一尺四方の聖域」を観てきました。その感想。ネタバレ含みます。

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あらすじ

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内容

戦時中のお話なので、歴史的背景がわかっていた方が楽しめるかなと(知らなくても会話内容である程度わかるので問題なかったですが)。あと時代的に重い……。事前情報は「音楽劇」ってことだけで気楽に観に行った分、余計重く感じました……。
演者皆さん歌うんですが(音楽劇なのでそれはそう)、ほんと皆さんお上手で聞き惚れてしまいました。ミュージカルとはまた違った、音楽劇として扱われる音楽の表現力みたいなものを感じました。唱歌、知らないものがほとんどだったし、いろいろ調べてみたい。
また、客席の通路を駆使したりステージ最前で腰掛けたりと臨場感溢れた演出も多く、すごく良かったです。視線誘導も巧みだったなー……。
前半後半の2部構成だったので、前半終了後、思考と配役を整理する時間が取れたの、何気に良かったです。前半の最後で頭の中「!?」だったので。
歌もとい歌うことを通して伝わってくる感情の変化や過去の記憶によって構成された音楽劇、とても良いものでした。また演劇が、舞台が好きになりました。

「人はなぜ歌うのですか」

 

タイトル

「一尺四方の聖域」のタイトルについて考える。

「一尺四方」という言葉は本編中に一度出てきました。戦争に行った息子の帰りを待つ母親が「息子が一尺四方に納められて帰ってくると思うと……」的な感じだったかと。なので「一尺四方」は【白木の箱(骨箱)=死後】を意味するものとしました。8寸壺用の骨箱だとちょうど一尺四方みたいなので合致するのかなと。

「聖域」の意味を見てみると……。

・聖人の域。聖人の境地のこと。
・神聖な土地・地域。犯してはならない区域。比喩的に、手を触れてはならない分野。
・神や聖なることに関連する場所で、神奇や神の気がおきたり、神がいる場所。神域。
・教会または寺院における、それらの幕屋もしくは祭壇の周りの神聖な領域のこと。
・近代合理主義的国家概念から見た場合に、近世以前の国家の権力が及ばないとされた場所。
聖域 - Wikipedia

うーん……解釈の幅。【犯してはならない区域】が1番しっくりくるかなーと。また、春田医師の死んでゆく赤子へのせめてもの情けでシスターが聖歌を歌う話(オルガンのところ)を考慮すると【神や聖なることに関連する場所・神聖な領域】も当てはまる気がする。

【死後】は【何人たりとも立ち入ることのできない領域】であり、感謝も愛も懺悔も謝罪もどんな声も届かない、故に「一尺四方の聖域」なのだろうと思いました。
死後はある意味誰からも侵されることのない安らぎの象徴のようなものなのではないかとも思えました。美化された死後みたいな。そこから(上記と対を為すように)、局長岩本や白瀬(溝端淳平さんの方)の生への執着から、生(【死後】の逆)はとても醜く、【神聖な領域】である聖域とはほど遠いことを示している気もした。逆説的に問いかけみたいな意味も込められてるのかな。
いろいろ考えられておもしろいしもう一回見てまた考えたくなる作品です。

 

役者さん

溝端淳平さん

感情が溢れないようせき止めながら絞り出す声がとても感情的で心にくるものがありました。自分が白瀬ではないことを告白するシーンが特に迫真でもう……(涙と鼻水垂れてるのが見えてしまって余計……)。最後に白瀬(本物)と顔合わせながら嬉しそうな泣き顔を見せる溝端さんに惚れました。顔がいいんだわほんと……。

 

吉田鋼太郎さん

現在の顔と過去の顔の演じ分けが本当にすごかったです。現在の顔は大人のお茶目さと物苦しさが内在し、過去の顔は生に執着し、自己を正当化しつつ非道になりきる二面性を持つ……。さすがとしか言い様のない芝居でした。すげぇ。

 

大塚明夫さん

お茶目なお医者さん。かわいい大塚明夫さん最高。……前半は。
後半は心の暗い部分が吐露されていくところは刺さる……。醸造された深みのある芝居でした。
「綺麗事は綺麗なんだからいくらでも言っていい」

 

黒沢ともよさん

天才。怖いくらい。
白瀬(溝端淳平さんの方)の告白にひとつひとつに返事をしながら崩れていく姿は……無理……。「はい」一言であそこまで表現できるんですね……。
春田医師の「ベッド使うか?」のくだりはバリ可愛くて声出そうになりました。

 か”わ”い”い”-”-”-”!”

 

他の役者さん達も歌うまいし表情豊かだし須く良かったです。ありがとうございました。

 

まとめ

そして次の劇が始まるのです。

engekisengen.com

 

 

おまけ:オタク視点の追記

ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が何度も脳裏に浮かびました。

「そしていつか、自分が沢山火傷している事に気づくんだ」

「燃えています! 自分がしてきた事でどんどん体に火がついて、燃え上がっています……!」